チェンバロとしての女

今週のお題「読書の秋」

 

 

 やさしい訴え (文春文庫)

やさしい訴え (文春文庫)

 

 

小川洋子さんの作品を最近好んで読んでいる。

博士の愛した数式薬指の標本

ミーナの行進、猫を抱いて像と泳ぐ、

ことり。

そして今は『やさしい訴え』を読み終わったばかり。

 

小川さんの小説の中で、指や手というのは

かなり重要な役割を担っていると思う。

『やさしい訴え』でも然り。

男の指が生み出す繊細なチェンバロと、

そこに自身を投影する女。

あなたの手と指で、そのチェンバロのように

まさぐられたいと願う女。

欲情がとても神秘的かつ本能的に描かれている

と感じた。

 

薬指の標本』でも指や手が読み解く

鍵になっているけれど、

それを読んだとき私はまだ22歳で、

小川さんの描く大人の欲と愛を

作品から読み取ることができなかった。

 

その点、『やさしい訴え』は

解説を読むまでもなく理解できたから。

私も少しは大人になったのかなと感慨深い

気持ちです。

 

小川洋子さんの作品は奥が深い。

大人でないと、わからない。

きっと私もまだ見落としているところがある

だろう。

 

秋の夜長、少し人肌恋しいこの季節。

1人静かな部屋で読んだら、

恋愛をしたくなる、欲情が沸いてくる、

そんな作品でした。